2002年9月3日
「平成15年度公立高等学校適正配置計画案」「平成15年度公立特殊教育諸学校配置計画案」についての声明
公立高等学校の機械的学級削減を行わず、
直ちに高校30人以下学級実現と障害児学校教育の充実を求めます
北海道高等学校教職員組合
全
北 海 道 教 職 員 組 合
北海道教育委員会(以下「道教委」)は、本日(9月3日)、「平成15年度公立高等学校適正配置計画案」「平成15年度公立特殊教育諸学校配置計画案」を発表しました。
「公立高等学校適正配置計画案」は、来年度全道の中学校卒業生が約2,000人減少することを理由に、全道で27学級の削減案を打ち出しました。総合学科・職業学科の学級減が10校10学級、募集停止となる学科が5校5学科と、重要な内容を伴う計画です。更に、2004年、2005年の中学卒業生の大量な減少をどう展望するのか、ビジョンを道教委が示せていないことも重大です。現在、道教委は「公立高等学校通学区域改善検討会議」で公立高校の通学区域拡大の検討をすすめていますが、最も早ければ2005年3月の高校入試から新たな「公立高等学校通学区域」が適用されることを考え合わせれば、一気に高校統廃合が進むことが懸念されます。今回の適正配置計画案は、昨年の計画案同様、そのための下地づくりとして看過できません。
そもそも、適正配置計画は2000年6月に道教委が発表した「公立高等学校配置の基本指針と見通し」に沿ってすすめられています。しかしこの計画は、今日のように30人以下・少人数学級編成が全国的な流れになる以前につくられたものであり、1学級40人定員として中学卒業生をいかに「収容」するかを前提にしており、道教委がこの前提のもとに学級削減を行う道理はますます失われています。道教委は直ちに「基本指針と見通し」を白紙に戻し、高校でも30人学級に踏み出す計画を策定すべきです。
競争をますます激化させ、矛盾を拡大させる「計画案」
札幌市を含む石狩管内は8学級削減と大規模な削減計画となっています。この計画が実施されれば、競争がいっそう激しくなる学区が生じます。例えば、石狩第5学区(西区・手稲区・中央区の一部)では、毎年の学級削減により公立全日制普通科の「収容率」(中学卒業生に対する定員の割合)が低下しています。01年度47.4%、02年度46.9%と他の学区に比べ著しく低い状況にも関わらず、今年度の3学級削減計画案によって46.5%となる(高教組札幌支部試算)など、中学生の高校受験をいっそう激しくするものとなっています。他学区においても、平均「収容率」が58.2%であり、学級削減では競争の緩和は進みません。
一方、札幌圏の高校に入学できない生徒が、郡部の寮のある学校に「流出」する傾向にあり、そうした高校では日夜を問わず生徒指導に奮闘してます。また、自治体では高校存続という課題に苦しい財源にもかかわらず、かなりの財政支援を行っています。こうしたことは本来道教委がその権限と責任において解決すべきですが、それを放棄した姿勢は、教育基本法第10条「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行わなければならない。」にも反するものです。
学校・地域の声が反映されない「計画案」
さらに、今回の原案では、「基本指針と見通し」に示される平成16年以降の学校再編をにらみ、渡島第1学区(戸井高校情報通信科のあり方、)胆振第1学区(登別市内における高校のあり方)で各1学級減となっています。地域にとっての高校は、まさに文化の発信基地であり、その在り方については、それぞれの地域のさまざまな人々の意見を充分に聞いた上で検討すべきで、軽々に結論を出すべき問題ではありません。ほぼ1月後に適正配置計画を決定し、該当校校長、PTA会長など限られた方とのみ非公開で協議(第2回地域別検討協議会)するのでは、道教委自身が述べている「開かれた学校」とはほど遠い施策といわざるを得ません。「機械的学級削減反対」「地域の高校を守れ」「学級定員の縮小」といった、ゆきとどいた教育を求める地域の要求に応えることこそが、道教委のとるべき姿勢ではないでしょうか。
道教委は教育条件整備にこそ力を入れるべき
今回の計画でも、一昨年の留辺蘂高校、標茶高校、昨年の檜山北高校に続き、池田高校を総合学科にする計画を明らかにしました。導入にあたっては、地域や教職員の合意が何よりも必要なのはもちろんですが、総合学科等の大規模な学科再編は、現在の条件整備では不充分です。昨年4月からの「第6次公立高等学校教職員定数改善計画」では、大規模総合学科への加配しか見込まれておらず、道教委は施設・設備の充実をはじめ、教職員定数増を含めた人的配置を独自にでも行うべきです。条件整備が不充分なまま、教職員に一方的に努力を押しつけることをやめ、「地域の高校を守ってほしい」という声に応えることが先決です。
また、昨年の上川中学校・高校に続き、上ノ国中学校・高校、鵡川中学校・高校、鹿追中学校・瓜幕中学校・鹿追高校と、4中学校・3高校間で「連携型中高一貫校」を導入する計画です。中学校と高校が連携することは本来必要なことですが、道教委自身が中・高の接続を将来どのようにするのかという展望を具体的に示していないなか、現場の教職員にその努力を肩代わりさせることになります。さらに、「教育課程の編成や教員・生徒間の交流等の連携」という目的を実現するためには、定員や予算などの教育条件の整備が不可欠です。
障害児学校については、今回10学級削減を計画しています。障害児学校についても生徒減に伴って学級削減を行うのではなく学級定員を縮小し、よりゆきとどいた教育を行うことが必要です。そして緊急に、訪問教育の過年度生の本格的受け入れの実現が求められます。
30人学級実現が全国的な流れ〜問われる道独自の措置
1989年以来、私たちは、本道で毎年100万筆にも及ぶ「ゆきとどいた教育をすすめる全国3000万署名運動」にとりくみ、生徒減少期こそ30人学級実現の好機という世論をつくってきました。「30人以下学級実現」をもとめる自治体意見書は166にものぼっています(全国で1664自治体で採択されています)。こうした世論を受け、昨年、標準法の改正が行われ、全国一律の30人学級実現は見送られたものの、1クラスを40人未満で編成することが可能になりました。本道での少人数学級モデル事業など、全国的に少人数学級編成への動きが大きくなっているなか、今回の計画案は、少人数学級によるゆきとどいた教育を求める国民・道民世論を考慮しない、収容率追求による機械的な学級削減案=高校リストラ計画であるといわざるを得ません。いま「学力」への不安が叫ばれるなか、その不安にこたえることも含めて、道教委は、学級削減をやめ、国に対して30人学級実現のために必要な予算確保を求めるとともに、道独自でも、30人学級実現にむけた教職員増を行うべきです。道・道教委は、巨大プロジェクト推進などの逆立ち財政をただし、今こそ道民の願いに応えるべきではないでしょうか。
憲法・教育基本法にもとづき、どの子にも等しくゆきとどいた教育を求める父母・国民の声は高まっています。私たちは、子どもたち一人ひとりが生き生きと通える学校をつくるためにも、「計画案」の撤回を強く求めるものです。