【資料ー4】
少人数学級展開の検討(要約改訂)
2001,2,28 埼高教教文部
1.30人学級をめぐる情勢
(1)1989年から始めた「ゆきとどいた教育をすすめる」全国3000万署名運動が多くの成果 を上げてきたこと
(2)この署名運動が30人学級実現は必然の方向という世論をつくりあげたこと。
(3)今国会に提案された「教職員定数法」で少人数学級が可能な足がかりをもりこませたこと。
(4)第6次定数改善計画に「小人数指導」として加配項目が加えられたこと。
(5)多くの自治体で意見書が採択され、一部とはいえ、県市町村で実質的な30人学級を実現させ ていること。
2.少人数学級展開の提起
(1)30人学級を実現させる法的根拠が不十分ながらも整備されつつ下で、部分的であれ実質的な 30人学級を実現させる。
(2)30人学級が必然の方向である状況下で、とりわけ「困難校」への対策として実質的な30人 学級を実現させる具体案。
(3)現在の「魅力加配」や「習熟度加配」を利用している学校の週あたり総授業時間数内もしくは それに近い時間数での少人数学級展開の現実性。
3.少人数学級展開とは
少人数学級展開とは「困難校」問題や高校中退 【表1】 少人数学級展開例
者急増問題などを克服する具体的な対策として、
教育委員会の教育条件整備という支援の下、現行
の募集学級数(人員)を変更しないで、1学年に
限って募集学級数以上の運営を行うことです。
例えば、表1のように募集5学級(40×5=2 |
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展 開 数 |
学級定員 |
募集学級5学級
定員:200名 |
6学級展開 |
33.3名 |
7学級展開 |
28.6名 |
募集学級6学級
定員:240名 |
7学級展開 |
34.3名 |
8学級展開 |
30.0名 |
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00名定員)の場合、1学年のみを6~7学級展
開することです。従って、1学年は1組から6~7組の学年構成となり、生活集団・学習集団として1学級あたり28~33名程度の少人数学級を実現させることになります。また、募集6学級の場合、展開学級を7~8学級にすると1学級あたり30~34名程度の学級規模となります。
4.少人数学級展開の検討ー実質的な30人以下学級実現をめざしてー
(1)少人数学級展開の試算。※表2参考
学校規模5クラスの学校では、完全学校五日制を前提に授業時間数を試算すると、週あたりの時間数はLHRを含めると1学年30×5=150時間となります。教科目の授業時間巣では29×5=145時間となります。従って、教科目授業時間は全学年では145×3=435時間となります。「困難校」では県の習熟度別学習推進校として加配をうけ、ある学校では1学年での国語Ⅰ(4単位)、数学Ⅰ(4単位)、英語Ⅰ(3単位)、オーラルコミュニケーションⅠ(2単位)を1クラスを2展開として授業展開しています。そのような学校では13単位分を2展開するので、65時間分相当が加配や講師時間として配置されています。その結果、このような「習熟度別展開」をすると合計週あたりの授業時間数は500時間となります。
【表2】学校規模1学年5学級、履修教科目29単位(+LHR=30単位)の週あたり時間数
学 年 |
通常展開 |
習熟度展開 |
1年6展開 |
1年7展開 |
全学6展開 |
1学年 |
29×5=145 |
29×5=145 |
29×6=174 |
29×7=203 |
29×6=174 |
習
熟
度 |
国語 |
|
4×5= 20 |
|
|
|
数学 |
|
4×5= 20 |
|
|
|
英語 |
|
5×5= 25 |
|
|
|
2学年 |
29×5=145 |
29×5=145 |
29×5=145 |
29×5=145 |
29×6=174 |
3学年 |
29×5=145 |
29×5=145 |
29×5=145 |
29×5=145 |
29×6=174 |
計
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435
|
500
|
464
|
493
|
522
|
そこで、このような学校で1学年のみ募集5学級を6学級展開すると、1学級あたり33~34名の学級展開となり、通常展開より29時間増の464時間となります。この時間数は現行で「習熟度」展開を行っている時間数より36時間減であり、このような展開は十分可能なものとなります。また、7学級展開であれば、1学級あたり28~29名の学級展開となり、その分の時間数を試算すると合計496時間となります。これでも現行の「習熟度別」展開時の時間数より7時間減となります。これもまた、十分に展開可能であることになります。
全学年6学級展開で試算すると、522時間となり、現行「習熟度別」展開の時間数に22時間分の保証があれば可能なことになります。
このように少人数学級展開は現行の条件下でも、生活集団としても学習集団としても実質的な30人以下学級を十分に可能な方法であります。
(2)実際の高校での試算(2001年度教員所要数調より)。※表3参照
少人数学級展開の試算を具体的な学校毎に行ったのが表3です。実際の高校での総時間数は選択科目の設定などにより表2に示した総時間数より多く設定してあるのが一般的です。そのような選択科目を同様に設定した上で少人数学級展開した場合について試算しました。A高のように総時間数では「習熟度別」学習指導よりも少人数学級展開の方が少ない場合もあるように、この表3から現在の教職員配置、もしくは若干の加配によって少人数学級展開が可能であることが読みとれます。
①A高の場合:3教科「習熟度別」として1学級2展開で授業展開しています。この場合の週あたり 総時間数は564時間となっています。この学校で1学年のみ+2学級展開とすると週あたり総時 間数は561時間となり、3時間減となります。「習熟度別」では3教科のみが20人程度の学級 構成となりますが、少人数学級展開では1学年の全講座が28人程度の学級構成にすることが現実 的に可能であることを示しています。
②B高の場合:B高は「習熟度別」展開は行っていない学校です。従って、1学年を+2学級展開す ると2学級分の時間数増となります。しかし、芸術や体育などの授業展開を考慮すると、週あたり の総時間数は現状の656時間に対して36時間増の692時間となります。この36時間は2人 分の加配措置があれば解決できるものです。
③C高の場合:C高は「習熟度別」展開は2教科のみ2学級を3学級展開しています。この学校で1 学年のみ+1学級展開すると、週あたり総時間数は現状の499時間に対して6時間増の505時 間となります。この場合は現在でも少人数学級展開は可能であるといえます。しかし、少人数学級 展開するには「コース」の固定クラスが障害となります。この点を克服する方策が必要となります。
④D高の場合:D高は「習熟度別」展開は2教科のみ2学級を3学級展開しています。この学校で1 学年のみ+1学級展開すると、週あたり総時間数は現状の423時間に対し19時間増の442時 間となります。この場合も1人の加配と講師時間の配分によって少人数学級展開は可能となります。
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【表3】 |
A 高 |
B 高 |
C 高 |
D 高 |
01年度所要数調 |
564 |
656 |
499 |
423 |
習熟度実施科目 |
3教科 |
な し |
2教科 |
2教科 |
少人数学級展開 |
+2(28) |
+2(30) |
+1(32) |
+1(32) |
少人数学級展開時数 |
561 |
692 |
505 |
442 |
総時間数差
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-3
|
+36
|
+6
|
+19
|
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5.少人数学級展開実現にむけた条件整備
(1)教職員定数増、もしくは教職員加配や講師時間数増の配分を行うこと
(2)「困難校」での「つまみ」(学年進行学級減)の廃止すること
(3)「困難校」での持時間を12時間を上限とすること
(4)定時制では募集1学級を2学級展開可とすること
(5)専門学科でも可能な方策を示すこと。例えば、ミックスHRなどによって少人数学級展開する など
(6)少人数学級学習指導展開は30人学級が実現するまでの経過措置として行うこと
6.少人数学級展開実現にむけて克服すべき諸問題
(1)「困難校」での実施中の「習熟度別」授業展開から少人数学級展開実施にむけた合意づくり
(2)各教科目間での教職員配置数や持時間数の変更の合意づくり
(3)増加クラス分の正副担任が必要となる
(4)専門学科や「コース」設置校では「ミックスHR」など少人数学級展開が可能な方策を策定す る必要があるとりわけ、「コース」設置校では「コース制」の存在を含めた検討が必要となる